堕ちたヒーロー

「こんなの仕事じゃない、就労と言えない」

心を込めて尽力した会社が倒産し、やがて派遣となった私は

ある時から、幕張新都心の大きな会社へ派遣された。

数十人の男性社員の中、1人の女性、

課された仕事など、あっという間に終わってしまう。

「何かすることはありませんか?」

課長は私のパソコンからネットを自由に閲覧できるように設定し、

ただ甘やかされるだけだった。

会社で使っていたのは古いオフィスコンピュータで、社内ソフト。

世の中はすでにパソコンで、遅れを取り戻すのに必死で、

派遣元に自主練習ソフトで学びに通った。

独身貴族で酒飲みの課長は、多い時は週2で飲み会を開き、

出席しない社員をなじる人だった。

私からはお金をとらず、私に唄え唄えと、

前の予約を消してまで、私にカラオケを歌わせた。

お子さんが2、3人いて住宅ローンも抱えている人にとって、

我儘課長の、私が気に入られてしまったがゆえの飲み会は

ありがた迷惑この上なかった。

疲れた・・・

新聞屋さんにもらった2F自由席のマリーンズのチケット。

気晴らしに足を運んだ。

ある選手に目を奪われた。遠く離れた2Fからも、気迫が伝わる。

まだガラガラだったマリンスタジアムで、

ひときわ輝いていた。


他の部署では、最初にかけられた言葉が

「キミ、どこの大学出身?」

フン、学歴バカめ・・・と心の中で思った。

扱いも最低。シュレッダー1枚、コピー1枚まで頼んでくる。

自分でやる方が早いだろ?

おまけに思いこみ男から、私がそいつに好意を持っていると勘違いされ、

社内メールではっきりそういうつもりは無いと告げると、

私には「勝手に誘惑してきて・・・」などとメールで攻撃、

バカな、50代だろうと思っていて当時実は39だったそんな人に、

当時まだ20代だった私がどうして好意を抱くものか。

サービス業のバイトが長かったから、皆さんに平等に笑顔を見せていて、勘違いして、

他の社員さんに激しい八つ当たりをするようになった。

社員さんは何も知らない。さすがに参った。

派遣元に話したら、証拠があるからセクハラで訴えられると。

でも私はそこで働き続けなければならない。

支店長の好意をお断りし、我慢して通うことになった。

苦しい、あの人に会いたい。

私は急いで東京ドームに行った。
(当時日ハムの本拠地は東京ドーム)

もうとっくに試合は始まっていた。

ただ、あの勇姿を観たかった。

試合でなく、あの人を追う目、嫌なファンだと思われたかもしれない。

なんだっていい、フィアンセとあんな別れ方をした私、

周りに弱みを見せない私は救われた。

それから長きに渡り、私のヒーローだった大村巌さん。

実力を発揮できないままロッテを引退し、解説者を経て、

日ハム二軍コーチから一軍コーチになり、チームを優勝へ導いた。

しかし、生え抜きが一軍コーチにおさまると、

また二軍コーチになり、

その行く末を心配していた。

幸いなことに、某球団の二軍コーチになっていた。

そう、幸いなことなのだ。

運どうこうよりあくまで実力の世界、生涯成績は決して良くは無かった。

なのに、なんという傲り高ぶりようだろう・・・

自身のブログは、数人のファンが気を遣いながら書き込みをしている。

私はそこで、恥をさらされた。

ブログには、今、どこに所属しているのかも明記されておらず、

地方リーグででも野球人として生きているのかと思っていた。

でも、某プロ球団の二軍コーチだ。

なぜ、はっきり言えない?

確かに選手時代は、いろいろ生意気な面もあったらしい。

でも若気の至りだと思っていた。

もう応援はしない、自身の傲慢さに気付くまで。

自身が恵まれていると気付くまで。

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